2012年7月30日月曜日

ダークナイト・トリロジー完結記念 名シーンBest10 <ネタバレ注意>


<ネタバレ注意>



遂に終わってしまった、クリストファー・ノーラン版バットマンシリーズ。

ダークナイト・ライジングについて、今だ自分の意見が整理できていないものの、とりあえず、見ていて好きになったシーンをかき集めて、ランキングを作ってみた。

・・・本能に従った結果、非常に偏りのある順番になってしまった。
しかしこれこそ、自分の中の直感的評価結果と言ってよいでしょう。





1位「ダークナイト」より、
ゴードンによる映画最後のセリフ。
”He's a silent guardian...a watchful protector. A dark knight.”
「彼は沈黙の守護者、我々を見守る番人、闇の騎士(ダークナイト)だ。」


2位「ダークナイト」より、
破壊されたタンブラーから、バットポッドが出現するシーン。
Goodbye.(Computer)


3位「ダークナイト」より、
バットマンとゴードンによるジョーカー取調べシーン。
"Look at you go."
「ほらやっぱりなっwww!!!」


4位「ダークナイト」より、
ジョーカーの手品シーン。
”I'm gonna make this pencil disappear. Ta-da!!”
「これからこの鉛筆を消してやろう・・・ジャジャーン!!」


5位「ダークナイト」より、
冒頭の銀行強盗シーン(特に、ジョーカーがマスクを外して笑うシーン)
”I believe whatever doesn't kill your simply makes you…stranger.”
「俺が信じるのはな、人は死ぬほど酷い目に遭っているとどんどん…イカれてくるって事さ。」


6位「ダークナイト・ライジング」より、
EMPブラスターを使って周囲の照明の光を消しつつ、闇に混じってバットポッドが走るシーン。


7位「ダークナイト」より、
ジョーカーが警察署から逃走する時に魅せる、箱乗りシーン。


8位「バットマン・ビギンズ」より、
クレイン博士=スケアクロウが喋るシーン全部。


9位「ダークナイト・ライジング」より、
バットマンがベインに無残にもボコボコにされるシーン。


10位「バットマン・ビギンズ」より、
火災で崩壊するウェイン邸で、気を失ったブルースをアルフレッドが助けるシーン。
Bruce:”You still haven't given up on me?” 「まだ僕を見捨てないでいてくれるのか?」
Alfred:”Never.” 「決して。」




・・・オマケ 「バットマン・ビギンズ」より、
世界のKEN WATANABE壮絶死シーン。



2012年7月26日木曜日

ダークナイト・ライジング公開直前覚書 その3


その3 バットマンとブルース・ウェインの二面性について、つらつらと。

 ダークナイト・ライジングでは、ビギンズでクローズアップされていたブルース・ウェインの過去が大きく関わってくるということだ。というか、アメリカでの公開後は、むしろライジングはビギンズのやり直しだとさえ言っている。ブルース・ウェインの過去のトラウマをブラッシュアップしつつ、バットマンとしての生き方を何らかの形で終わらせるまでが描かれるのだと思う。
 まぁありがちな設定かもしれんが、それをどう描くか、に期待したい。

>バットマン・ビギンズでのレイチェルの言葉
バットマン・ビギンズで、焼失したウェイン邸の前でレイチェルが言ったセリフがある。
  「ブルースは戻って来なかった、この顔こそ、仮面なの。」
ここで、バットマンとブルース・ウェインの二面性が初めて示唆されてたんじゃないかと思う。それに加え、こんなセリフもある。ブルース・ウェインが高級レストランを買い取って水槽で美女と遊んだ後で、バッタリとレイチェルに遭遇してしまった場面。
  「人の本性は行動に出るのよ」
という何とも痛いセリフ。それに対してブルース・ウェインは、バットマンとしての行動でもって、その意見に答え、評価を得ようとした。だからコウモリ姿でレイチェルに対して同じ言葉を発したわけだ。
 しかしそれでは、「バットマンの正体はブルース・ウェイン」ではなく、「ブルース・ウェインの正体はバットマン」という定義の仕方をせざるを得ない。すなわち、バットマンとしての思想こそ、ブルース・ウェインの内面にあるということ。レイチェルにとって、バットマンとしての思想を前提とした今のブルース・ウェインはバットマンが被った大富豪としての顔であり、レイチェルが愛した人間とは、もはや別の存在となってしまったわけだ。

> ダークナイトでのスケアクロウの言葉
 スケアクロウことキリアン・マーフィは、ダークナイト・ライジングでも出演するという情報が以前あった。それを聞いた時思い当たったのが、ダークナイトのストーリー序盤でのスケアクロウのセリフ。
  自警市民「あんたを手伝いたいんだ!」
  バットマン「助けなど要らない!」
  スケアクロウ「私の診断では違うぞ」
 恐らくこの時点で、スケアクロウ=ジョナサン・クレインは、精神科医として、バットマン=ブルース・ウェインの内面が相当におかしくなっているのをすでに見ぬいていたんだね。ダークナイト・ライジングで、その辺の詳細な意図が明らかになるのではないかな、と。

>ダークナイト・ライジングTVスポットでのアルフレッドの言葉
 「あなたはもうバットマンではない」
ダークナイト・ライジングのストーリーは、ダークナイトから8年後の事だという。バットマンとしての活動を休止していたブルース・ウェインは、その長期休暇ゆえ?か、既に二面性を失っていた?それとも、バットマンとしての闇の心を内に潜め、二面性を維持したまま、バットマンを引きずって隠居していた?
 


 さて、明日の先行上映から、事実上の一般公開となるダークナイト・ライジング。
幼い頃にコウモリだらけの井戸に落ち恐怖し、両親を悪党に殺害され、あまりに大きなトラウマを引きずり続けた大富豪の末路とは・・・?
 IMAXシアターでの先行上映一発目で鑑賞予定なり。


2012年7月25日水曜日

ダークナイト・ライジング公開直前覚書 その2

その2.ウォール街占拠運動との微妙な関係。


数年前だったろうか。

「ウォール街占拠運動が幅を利かせるニューヨークのど真ん中、ダークナイト・ライジングの大規模撮影が行われた」

という報道が話題になった。

 クリストファー・ノーラン監督の徹底した箝口令のせいで、ストーリー上の情報は一切漏れてこなかったが、当然予想されたのが、「次回のバットマンでは、ウォール街占拠運動を背景に、現代社会、主にアメリカ社会において問題とされている格差社会の問題をクローズアップさせるのではないか・・・」という事。 ビギンズはともかく、ダークナイトやインセプションで深いテーマを扱ったクリストファー・ノーランであれば、現代の社会背景を巧みに編みこんだ映画を撮れるはずだから。

 しかしここで疑問が生まれた。ニューヨークでの大規模撮影は「警官隊と武装集団の武力衝突の様子で、バットマンは警官隊に混じって武装集団と戦っていた」という点だ。もし、格差社会やウォール街占拠を意識させるのであれば、「警官隊」はウォール街の連中、もしくは文字通り警官のメタファーで、「武装集団側」が一般国民もしくは貧困層のメタファーの役となるはず。となるとどういうことだ?主人公バットマンは、ウォール街の連中に味方して、「悪=武装集団=一般国民」と戦うという話なのか?
 ウォール街占拠の話はアメリカを二分する問題ではあるが、映画のクチコミや収益を支えるのは、(ウォール街占拠になぞらえるならば)「1%の富裕層」ではなく、「99%の一般国民」だ。単純に人口比で言うならば、ウォール街占拠を支持する人口の方が多いはず。(選挙の話はおいといて、ね)だったら、映画においては一般国民感覚で撮った方が高評価も収益も得やすいはずなんだ。それを考えると、バットマンが味方すべきは、武装集団側ではないだろうか云々と・・・。
 とはいえ、やっぱり生真面目なノーラン監督であれば、善悪の単純構造では描かず、武装集団側=ベインの微妙な主張にクローズアップし、ベイン側の肩を持つようにも映画を作るのではないかと予想した。

 しかし、アメリカでの公開後、批評家達が口々に話していたのが、「バットマンはまるで共和党大統領候補ミット・ロムニーだ」だという指摘。つまり、ダークナイト・ライジングでは、ウォール街の連中に味方をし、ウォール街占拠運動を起こしている市民に敵対する思想を含んでいる、と。やはり、撮影時に抱いた疑念は、正しかったわけだ。まぁ、本当にそうなのかは、自分の目で確かめるまで決めつけてはいけないのだけど。

 知人と会話をする際、「宗教と政治の話はタブー」とは言うけども、映画もその通りなんだと今回改めて感じた。町山氏は「イデオロギーで映画を語ってはいけない」と言っていて、自分もその意見に賛同するけども、全員が全員そういう味方ができるとは思えない。今年はアメリカ大統領選挙の年だけども、現職オバマ大統領とロムニーの支持率には大きな差が無く、どっちに転ぶか非常に微妙な状況であると聞いてる。今回、ロムニーを美化する内容の映画であった場合、大統領選挙に何かしらの影響を与えてしまうのだろうか・・・。気になってくる。


2012年7月24日火曜日

ダークナイト・ライジング公開直前覚書 その1

いよいよ、4年の歳月を経て、ダークナイトの続編「ダークナイト・ライジング」が公開される。アメリカでは日本より1周間早く封切りされたけども、それと同時に色々な「動き」が起こり、正直滅入ってしまった。

とりあえず、週末の鑑賞に向けて、ポイントを整理していく。




その1.オーロラでの銃撃事件


しばしば、「歴史に残る映画」というのは登場するが、どのように歴史に名を刻むかは、様々な事例が考えられる。
例えば興行収入でトップ1になれば、数字として記録に残るのは当然。また、公開年のアカデミー賞を多部門で大量受賞することによっても、オスカーの受賞リストに名を残せる。

ただ、経済・娯楽としてではなく、文化・芸術視点で考える場合、歴史に残る映画とは「その時代に新たな価値観を提示する映画、新たな問いを発する映画、印象に残る表現手法を使う映画、前例のない何らかの衝撃を与える映画etc...」である場合が多い。「サイコ」や「2001年宇宙の旅」等が、そういった類に分類されるべき映画だ。そして、それらは、いくら儲けたかという尺度では図れない価値観の世界と言える。

ダークナイトはどうだろうか。
興行的にも成功を収めてはいるものの、どちらかといえば、後者の意味で歴史に残る映画かと思う。バットマンの宿敵ジョーカーを演じたヒース・レジャーは、16時間の連続撮影という強行スケジュールの中、クリストファー・ノーラン監督の指示により、シド・ヴィシャスと時計じかけのオレンジのアレックスを精神に宿して演技を続けた。その結果、心を病み、不眠症となり、ミシェル・ウィリアムスとの婚約は破棄となり・・・そのまま死の床についてしまった。ヒース・レジャーは、命を引換えにジョーカーを演じ、伝説を作ったと断言できる。その悲劇性が映画界に与えた衝撃は、当然大きかった。

では、ダークナイト・ライジングは?
ライジング公開に当たって、その期待度が並大抵のものではなく、当然ながら興行記録の更新が望まれた。しかし今年の春、正統派ヒーロー映画アベンジャーズが、超特大ヒットを飛ばした。アベンジャーズは、子供から大人まで楽しめる点、3D上映による割増料金を加算できる点で、「儲けやすい映画」である反面、ダークナイト・ライジングは暗くて大人向け、しかも2Dオンリー上映といったように、「儲けにくい映画」だ。それゆえ、アベンジャーズの記録を抜き去り、興行記録で歴史を塗り替えるのは難しいのではないかというのが大方の予想であった。 
そんな冷ややかな分析が成される中、ついに20日に公開され・・・全く不本意な形で、歴史に残るオープニングデイを迎えることになった。

20日の夜、「アメリカの映画館で、最新作上映中に銃乱射」というニュースの見出しを見た瞬間、ダークナイト・ライジングの事だとわかった。ヒース・レジャーに続いて降りかかった「人の命に関わる悲劇」。不謹慎とはわかっていつつも・・・ノーラン・バットマンシリーズは呪われているんじゃないか、と思わずにはいられない。
犯人のジェームズ・ホームズは「自分はジョーカーである」と名乗ったという未確認情報がある。「現実世界に本物のジョーカーが生まれてしまったというのか」・・・という危惧が拭えないが、実際はどうなんだろうか。
ダークナイト本編において、ジョーカーに心酔し市長暗殺に加担する男として「シフ」という妄想型統合失調症患者がいた。バットマンはハービー・デントに対し、「ジョーカーはこういう人間を仲間に引き入れるんだ」と言ってシフへの尋問が不毛である事を主張した。これ、要は「ジョーカーの哲学の本気でなびいてしまうのは、シフのように精神に以上を持っている人間ぐらいだ」と言って一蹴しているわけだ。銃乱射犯は、ジョーカー自身としてではなく、ジョーカーのフォロワーとして見るべきで、シフに近い存在だとして見るべきと思う。(マトリックスでも、同様に殺人事件が起こったという話を聞いたことがある。「自分は今マトリックスの中にいるんだ」と信じる人間が実際に人を殺して自殺し、マトリックスから脱出しようとしたのだろうか。)

歴史に残る映画とは、どうあるべきか。興行収入は、宣伝によってある程度上昇させられるが、人の心に残る映画となると、「人間を心酔させる魔力」を持つ映画でなければいけない。今回のライジングでの惨劇は、前作ダークナイトの議論を蒸し返すことになるだろうし、「ライジング上映中の悲劇」である以上、ライジング自身も社会歴史上の汚名を被ることは間違いない。
時代の先を行く映画というのは、メインストリームではありえない。ダークナイトやダークナイト・ライジングのような、普通の映画とは別の新しい尺度で検証される映画であって、その新尺度によって後の映画に影響を与えることになり、歴史の系譜を作る。すなわち、歴史に残る映画になるのでしょうな。



アメリカでのライジング公開後、さっそく批評家の分析が始まっている。右派メッセージが強いという意見が多数あるようだ。次はそのあたりを整理したい。