2012年5月26日土曜日

臭いゴミ箱のフタをあけろ!「ある戦慄」

町山智浩氏のトラウマ映画館で紹介されていた映画「ある戦慄」がDVD化されてTSUTAYAに並んでいたので、さっそくレンタル。これはとっても後味の悪い映画だ。

<ストーリー> ーamazonより抜粋ー
”ニューヨーク・ブロンクス。夜の街を闊歩するジョーとアーティのチンピラ二人組は通行人を暴行して小銭を巻きあげると、マンハッタン行きの地下鉄に乗車する。そこには幼い少女を連れたウィルクス夫妻、アリスとトニーの若いカップル、年老いたベッカーマン夫妻、教師のパーヴィスと美人の妻バーサ、白人を憎んでいる黒人アーノルドとその妻、同性愛者のケネス、休暇中の陸軍一等兵などが乗っていた。ジョーとアーティは乗客をからかい始める。ドアが故障して他の車両へ移動できないため誰も逃げられない。すると乗客はチンピラに挑発され、日ごろの鬱憤を爆発させ、感情をむき出しにし、互いにののしり合い始める。調子に乗った2人は少女に手を出そうとする。そのとき、ついに立ち上がって彼らに対決を挑んだのは意外な人物だった……。”

 暴力シーンはほとんど無く、ただひたすら精神をえぐるので、スカッとする場面がほとんど無い。乗客同士の喧嘩もあるのかと思っていたのに、他人がチンピラに絡まれるのを皆が見知らぬフリだし、なおさら気持ち悪い。その上、暴力や乱闘が無いので、観客の鬱憤を晴らす所も存在せず、全くスカッとしない。映画のプロローグの中で、予めチンピラの怖さを説明しているので、「こいつら何をしでかすか分からないぞ・・・」という印象を持たされた。だから暴力が無くても不安で仕方なくなるのだ。

でもこの映画は、とっても価値のある映画だよ。

 人が他人に見せまいと隠してしまう本音、本心、裏腹を、包み隠さず、オーバーでもなく、ストレートに描いている。これを見ると、「もしや、自分もこうなってしまうんだろうか?」と考え、落ち込んでしまうんだ。
 残念ながら、こういう汚い一面はどんな人にもある。普段はキレイ事を言ったり、自分の自身や実力、道徳観を信じてしまうことが多いんだけど、いざ危機的状況に陥ると、何もできないどころか、無様な自己保身、逃避行動をとってしまう。そんな弱い生き物なんだろうな、人間って。
 でもこういう映画を見ておくことで、そんな自分の弱々しい部分に目を向けることができる。弱さを理解することで、無闇にプライドを持つことを防げるし、何かに遭遇したときにどういう行動をとることができるのか、自分にできる事は何なのか、シミュレーションしておくことができる。

 もっともっとこの映画が広まればいいのに。


0 件のコメント:

コメントを投稿