2012年2月20日月曜日

日本未公開「マージン・コール」


以前取り上げたマージン・コールが、今年のアカデミー賞の脚本賞にノミネートされた。



ストーリー −Amazonより抜粋−
”2008年、ニューヨーク。ウォール街の投資会社で大量解雇が始まった。解雇対象となったエリックは、アナリストのピーターに「用心しろよ」と意味深な言葉を残しUSBメモリーを託す。原子物理学の博士号を持つピーターは、その部署でリストラから生き残った数少ない1人だった。その夜、エリックから引き継いだデータを調べるピーターは、会社倒産をも招く危機的事態に気付き上司のサムに報告すると、深夜、緊急の重役会議が開かれることになる。8兆ドルもの資産の命運を左右しかねない状況で、彼らは経済的・道徳的にも崖っぷちに立たされることになっていく。決断の時は、刻一刻と迫ってきていた・・・。”



 ドキュメンタリー「インサイド・ジョブ」は、実際の金融商品のメカニズムについて解説し、理解した前提で話が展開するせいで、なかなか難解なストーリーになっていた。でも本作は、内容理解において複雑な金融知識はそれほど必要ない。「人は、自らの行いに起因して引き起こした絶望的危機に直面したとき、どんな心理に陥るのか、何を第一に考えるのか」といったコトを中心に描いた、あくまで「人間ドラマ」だった。
 金融危機の背景がある程度わかっていないと、この恐怖感は伝わらないかもしれないけど、もし予備知識がある程度あるのであれば、カナリ楽しめる・・・じゃなくて、ウォール街の連中に対する腸煮えくり返る思いを堪能できる。

 シナリオのテンポはソコソコGood。翌朝訪れる恐怖の瞬間に向けての対策を夜通し行う緊迫感が良い。まるでテスト前夜に徹夜でテスト勉強をしていた時代に経験したような、異様な高揚感を味わえる。
 怖かったのが、デミ・ムーアとサイモン・ベイカーがエレベーターの中で、掃除のおばちゃんを間に挟んで会話をしているシーンだ。おばちゃんの存在に気付きつつも、それを眼中に入れず、社長に責任追求された際の対応について話し合っていた。この期に及んで、自らの保身に走り、下々の人間には気にもとめていない感じが象徴的に描かれているシーン。寒気がした。

 ラスト。社長のやり方を嫌悪し、退職を検討するも、カネのために会社に残る決断をしたケヴィン・スペイシー。彼は離婚しているが、最期、唯一の家族だったと思われる愛犬を亡くしてしまう。悲しみにくれる彼は、この先どんな人生を送ることになるのか。 結局、カネは人を潤すものではなく、本質的幸福は他にあるんだと思った。

 ところで、序盤にエリックへ解雇通告を行った人達は、「マイレージ・マイライフ」でジョージ・クルーニーが演じていた「リストラ宣告人」のような人だ。本当にあるんだ、ああいう職業。


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