2012年1月16日月曜日

連合艦隊司令長官 山本五十六 (4.2/5.0)


やられてしまったー  涙ダーダー鼻水グチャグチャ。



俳優の演技:4.8
シナリオ:3.3
編集・演出:3.5
美術・CG:4.5
テーマ性・メッセージ性:4.9
以上、総合4.2点なり。


<ネタバレ注意>

●良かったところ
・シナリオの不出来を、役所広司を始めとしたベテラン役者勢がカバーし、なんとか重厚な雰囲気を作り出していた。彼らの演技力は大いに賞賛されるべき。
・邦画に珍しく、CGが良かった。まるで本当の航空機からの風景のように見えた。邦画の技術と資金力で、ハリウッド映画の持つ迫力感を真似ようとしても、オモチャのような質感しか出せなかったことだろう。この映画の映像は、無理にカメラを動かそうとしていなかった。そのため迫力には欠けていたものの、その反面(そのお陰で)臨場感を感じられるような「空気感」を出せていた。まるで実際に航空機で飛んでいる時のような感覚を味わった。これは素直に驚いた。
・テーマ性が強い。日本人の誰もがもつ「原罪」の意識に対し、強烈なメッセージを送りつけてきた。
 日本人は、どうしてWW2で負けてしまったのか。
 どうして開戦せねばならなかったのか。
 何を持ち、何を失ったのか。
 そして、そこで経験した失敗を今もなお繰り返していないだろうか。
この映画から日本人が考えるべき事は、大きく重い。
 
●悪かったところ。
1にも2にも、シナリオ酷い。
・製作者の意図を、五十六の行動や言動によって直接的に表現している部分が多く、観客とのハートでの対話ができていない。メッセージというものは、間接的に伝えるからこそ、広がりが増すものなのに。ヘタクソ。
・なぜ陸軍や海軍、そして世論が開戦へ推し進んでいったのか、なぜパールハーバーやミッドウェーで五十六のシナリオとは違う方向に事が進められていったのか、といった軍中枢部の行動に論理的な説明が足りない。いや、実際には論理性なんて当時から無かったのかもしれないけど、少なくとも映画の中においては、五十六の論理的な解釈に対して、愛国心でも何でもいいから「彼らなりの論理的説明」によって五十六との議論をさせるべきだった。そして、どうあがいても埋まらない溝をもっと明確にした方がよかった。あの描写じゃ、陸軍海軍の開戦派は論理思考が出来ない単なるバカじゃないか。単なるバカが多かったから日本は戦争をしたのか? 違うだろ!!
・新聞社の香川照之と玉木宏の使い方がヘタ。
 やりたいこと自体はいいと思う。玉木宏を五十六視点に近い位置に置き、ストーリーテラーとしての役割を果たさせることに異論はない。そして、社説によって世論を戦争に導いていった香川照之が、玉木の招集に動揺し、国家の大義名分の下に無数の小さな悲劇が存在することを気づかされる展開もとても良い。問題は、香川照之が、玉木の身を案ずるほど、彼のことを思っていたのかどうかが、シナリオ上から読み取り辛いこと。一応、本編中に互いが言い合いになるシーンがあるけども、あれだけじゃちょっと弱いよね。
・お茶漬けとか将棋とか、ちょっと突拍子すぎるだろ。人柄を表すにしても度が過ぎる。

 
 とまぁツッコミどころは山ほどあれど、非常に満足感を得られる作品だった。
映画館で見れて、本当によかった!

 自分の場合、半年ほど前に、広田弘毅をテーマにした「落日燃ゆ」を読んでいて、WW2当時に戦争をしたくなかった人達に触れたばかりだったので、映画を先回りしながらスンナリ受け入れることができた。

 彼らの存在を、贖罪の拠り所にも、罪を逃れる言い訳にもしてはいけない。敗戦の事実を真摯に受け止め、そこで何が起こっていたかを冷静に見定め、今後の日本の将来に活かすべきだんだろうね。


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