2012年1月15日日曜日

米国特許法改正について小言メモ


 昨年9月にオバマがサインした改正法案は非常に広範囲に渡る内容を網羅しており、一言で言い表すことはできない。シロートなりに記憶している部分のアウトラインをまとめてみる。

 最も注目されるのが、§102、つまり発明の新規性に関する概念の刷新だ。主要新聞での報道によると、アメリカのローカルルールである「先発明主義」が、世界標準である「先願主義」に移行したとザックリ表現されたようだが、これは正確には間違っている。実際には、先発明主義と、先願主義の中間に位置する考え方が採用されていて、先願主義に慣らされている我々にとっては非常に判りづらい。ホントにホントに判りづらい。発明者が誰か、発明が何か、どの段階で発明したのか、どの段階で開示が行われたのか等々、特許要件において考慮されるファクターは多く、それによる判断も多数に分岐するので、頭がごちゃごちゃになってくる。ま、これまでの§102も日本実務に慣れた自分にとっては複雑ではあると思うけど。

 今回の改正には30を越える項目があるが、それぞれ発行日が異なる。オバマのサインによって即日発行されたものもあれば、1年後のものもある。上記新規性に関する規定なんかは、18ヶ月後だ。これは、改正の目的が影響しているだろう。
 世界標準との連携や、法目的の根本治療にあたるものについては時間をかけて改正を図っていくようだが、早急に対策が求められている問題を正常化することを目的とする改正は、発行が早い。主なものは、パテント・トロール対策に関する項目だ。これは早急に被告側を救済しなければならないことから、即発行された。今回の発行によってパテント・トロールを主業務とする連中が不利な状況になるため、発行前に訴訟を起こして旧法による判断をさせようとした輩が、オバマのサインの直前に滑り込み提訴をして、訴訟件数が短期間に急激に増加したらしい。まぁ、それもやむなしか。
 
 こんな感じに、新法発行以前の出願・提訴は、旧法が適用され続ける。つまり、今後何十年は、旧法の下に審査・裁判が行われる案件が星の数ほど存在することになる。よって今すぐ手元の法文集や実務ガイド本を捨ててはいけないし、旧法の知識が今すぐ必要無くなるわけでもない。

にしても、覚えなきゃいけない事が多くなるのは、めんどくさいね。




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