メモ。
29条の2について。
拡大された先願範囲の規定は、発明者が同一である場合は除外される。
この前提のもとに、以下のケースを検討する。
Zさんが、発明イを出願。
●発明イ=(a+b)+c ※右辺全部は、明細書記載の範囲、()内は請求項
6ヶ月後、すなわち発明イの公開前、Zさんは発明イの改良発明ロを出願。
●発明ロ=(a+b+d)+c ※dは改良事項
5年後、発明イについて、特許庁より拒絶理由通知を受領。(29条1項、2項)
補正を行った結果、
発明イ=(a+b+c) としてcとの相乗効果を主張。
拒絶理由通知対応より数カ月後、発明イに特許査定が送達された。
その数日後、発明ロについて拒絶理由通知を受領。(29条2項)
補正を行った結果、
発明ロ=(a+b+c+d) を補正後の請求項とした。
ここで、発明ロは、原則どのように審査されるべきか。
29条の2によれば、発明ロは、発明イを拒絶引例として引くことはできない。
すなわち、発明イの公開によって、公知技術となっている「a+b+c」については、発明ロと同一発明者かつ公知技術化前に出願されたものであることから、発明ロの審査において先願範囲は拡大されず、新規性は喪失していないと認定されるものである。
加えて発明イは、審査の結果、特許査定が下りている。よって、発明イ=(a+b+c)の内容は進歩性が認められ、特許要件を満たすものである。
発明イの改良発明ロは特許要件を満たす発明イに対し、改良d加えたことによるの下位概念発明であるため、発明ロ=(a+b+c+d)は、論理的には特許を受けるべき発明であると推察される。
ただし、現実の実務上はそうは行かず、
審査官も違えば、進歩性判断の審査基準の裁量も、それぞれサーチ・スクリーニング・ピックアップされる引用文献も異なる。
よって、発明イが特許査定となり、発明ロが拒絶査定を受ける事も、起こりうるものである。
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